Day5世界の果てと地獄の山下りより続き
1時間程度ベッドで横になって休ませてもらうと、室長の体調はだいぶ良くなりました。
この時は自分の体がどうなってしまったのか自分でもわかりませんでしたが、後から考えると単純にエネルギー不足ではなかったかと思います。
思えば、この日は朝4時に起床して、9kmのウォーキング。
しかも、その道のりは急な坂や岩場がある山道です。
通常の同じ距離のウォーキングと比べて、倍以上の体力は消費したはずです。
しかも早朝ということもあり、朝食は軽くしか食べていませんでした。
さらに事態を悪化させたのは、前日ヤーラ国立公園にいた時に、室長が少しお腹を壊していたことです。
お腹の調子自体は1日で治ったのですが、あまり胃腸に負担をかけない方がいいのではないかと思い、食べる量を少し減らしていたのです。
この日のために自宅付近を毎週10キロランニングして鍛えてきたのですが、エネルギー不足ということになれば、その努力も全くの無駄ということです。
自分の体力を過信していました。
室長はもう若くないのです。
逆にワイルド研秘書には、その適応力の強さを見せつけられる結果となりました。
ヤーラでもモリモリご飯を食べていましたし、この日の朝食も自分よりはたくさん食べていたように思います。
やはり、人間食べるということが基本のようです。
ベッドで休ませてくれたBluefield Tea Gardensの方々には丁重にお礼を言って、お別れしました。
ちゃっかりお茶のお土産コーナーで買い物をしてから、宿泊地であるキャンディ(Kandy)に向かいます。
まだしばらく山道が続きそうだったので、お金はかかりますがトゥクトゥクに乗ることにしました。
またバスに乗って酔ってしまうのが、怖かったのです。
しっかり休んで、気持ちも切り替えられたことで、キャンディへの道のりは快適に過ごすことができました。
途中、かなり強い雨も降ってきましたが、トゥクトゥクの幌を打つ雨の音はむしろ快く、車内に流れ込む涼しい山風を感じながら市街地へと向かっていきます。キャンディ市内に入るとちょうど帰宅ラッシュの時間帯とぶつかったためか、渋滞に巻き込まれました。
トゥクトゥクのお兄さんは少しイライラした様子でしたが、
「まあゆっくり行きましょう」
とこちらから声をかけると、安全運転でホテルまで送り届けてくれました。
この日宿泊したのは、キャンディの観光スポットに近い、「セイロニイン」というホテル。
観光客用というよりはビジネスホテル風の外観ですが、客室は清潔で、フロントのおじさんも穏やかで優しい方でした。
チェックイン後、ぶっ倒れた後遺症(自分の体力のなさに自信を喪失した精神的ショック)で、どこにも出かける気が起こらず、とにかく休まなければという気持ちでした。
非常用にと買っておいたスリランカのカップラーメン(麺が粉っぽくてあまり美味しくありませんでした)やビスケットを大量に食べて、この日は寝てしまいました。
* * *
翌日、8時頃までゆっくりと休んでから活動開始です。
トイレに行くと、窓からブッダが見下ろして来ます。
ホテルにお願いした朝食は、お茶目な感じでした。
体調も不安でしたが、せっかくキャンディという場所に来たので、仏歯寺だけは行くことにしました。
ホテルから徒歩10分ほどだったと思います。
活気のある街を歩き、仏歯寺に向かう。
仏歯寺は、その名の通りブッダの歯が納められているお寺です。
キャンディを訪れたら必ず行くべきスポットとして、ガイドブックに紹介されています。
簡単な荷物検査を通過すると、仏歯寺の敷地の中に入って行きます。
広い敷地の中でうろうろしていると、裸足のおじさんが話しかけて来ました。
秘書は、
「ガイドさんじゃない? お金取られるよ」
と警戒していましたが、これまでスリランカ人に散々親切にしてもらった室長は、多少はぼったくられてもいいや、という気持ちでした。
おじさんは、チケット売り場(お寺なのに自動販売機なのです)まで案内してくれ、靴を預ける場所、チケット渡す場所と、次々と案内して行きます。
中に入っても、いつも決まったルートがあるのか、どんどんと案内を進めます。
少し進んでは、
「これはこういう歴史がある、はい写真撮って」
と、彼のペースです。
儀式を行う男たち。
豪華な祭壇(?)。中には、キラキラした仏像がありました。
日本語でも仏の教えが書いてありました。
ガイドのおじさんは、どんなもんだぃ、というような顔をしていました。
世界の仏教国からスリランカに贈られた仏像たち。
この仏像たちの前には大きな献花台があって、たくさんのお花がありましたが、ガイドのおじさんが、この花を私たちに渡して何か言っています。
よく聞き取れなかったのですが、お釈迦様がここから生まれたとかなんとか言っていた気がします。
不思議な構造で、花の真ん中のところがフタが付いているようにパカパカするのです。
ブッダの歯を入れた金色の入れ物は、お寺の2階にあります。
ものすごい混雑です。
この日は、新しく生まれた赤ちゃんのためのセレモニーがあるらしく、泣き声がいたるところから聞こえました。
2階に上がっても、ものすごい人の数。
床が抜けないのか、少し心配になりました。
秘書の友人にこの写真を見せたところ、大勢の人が集まってチャーハンを食べているのかと思ったそうですが、違います。
実際には、たくさんのお花が供えてあるのです。
一通りお寺の中を案内された後、次はゾウがいるから見に行こうと、ガイドのおじさんは私たちを小さな博物館に連れて行きました。
秘書は、生きているゾウがいるのかと思ったらしいですが、そこにあったのは、大きなゾウの剥製でした。
このゾウの名前は「ラジャ」といいます。
キャンディでは、毎年開かれるお祭りで、ゾウが仏歯の入った金色の入れ物を背中に乗せてねり歩くのですが、その役を長らくやっていたゾウのようです。
この部屋には、ラジャの生涯を説明した写真パネルが壁一面に貼られていました。
どうやら、スリランカでは英雄的なゾウらしいです。
一通り案内が終わると、ガイドのおじさんは木陰に僕らを誘導し、
「1人20ドル、2人で40ドルね」
と要求してきました。
1時間ちょっとの案内でぼったくるにしては、ちょっと高すぎやしないかと思いましたが、結構な暑さと昨日の体調不良とで言い返す気力が残っていなかったのと、一通りスムーズにお寺内を回れたのは事実なので、払ってしまうことにしました。
スリランカ経済に少しでも貢献できればと思います。
地元の人用の商店で買い物をする秘書。
まだ11時にもなっていませんでしたが、一度ホテルに戻って体力回復を図りました。
体を気遣いながらなので、なかなか観光がはかどりませんが、午後はホテルから少し歩いたところで見つけたお土産屋さんやショッピングモールで買い物を楽しみました。
LUV SL Kandyというお店は、いわゆるスリランカっぽいグッズが買えるお店です。
デザインもしっかりしていて、値段もリーズナブルなのでぜひおすすめします。
Tシャツは、1300ルピーくらいだったと思います。
(帰りにコロンボの空港で同じお店を見つけましたが、キャンディのお店の方が安かったです)
ゾウのデザインが多い。
スリランカの人がゾウを誇りに思っているがわかります。
室長は、本物の動物だけでなく、動物グッズも好きなのです。
夕飯時になると、体力回復のためにとにかく食わなきゃダメだ、ということで、
「せっかくスリランカに来たのだからスリランカっぽいものを食べなきゃ」
という考えを振り払い、ショッピングモールのフードコートでパスタを食べ、さらに、持ち帰りでホットドッグを買いました。
ホテルの部屋に戻り、ホットドッグを口に詰め込んでいると、
「もう日本に帰りたい…」
という気持ちが、胸の中に湧き上がってくるのでした。
Day7に続く。
「スリランカDay6 キャンディの英雄と悲しみのホットドッグ」への2件のフィードバック