二度寝したらもっと眠くなりました。
それで、どんな夢を見たんだい?
怖かったです…
でも、野生動物の中には、実際に人間のハンティングの標的になっている動物 もいるんだよね。
僕らみたいに飼われている動物には考えられない生活なんだろうだなぁ。
アルパカ先輩に訊いてみようか。
カナダのアルバータ大学を中心とした研究グループは、6年間にわたってメスのアカシカ(エルクともいいます)の行動を追跡し、ハンターが及ぼす影響について調べてきました。彼らが明らかにしたかったのは、アカシカが「学習」によってハンターから逃れているのか、という点です。
これまでの研究で、メスのアカシカがハンターに撃たれる確率は、年齢を重ねるごとに減っていくことがわかっていました。これには、次のような3つの可能性が考えられます。
- 生まれた時から撃たれやすい個体と撃たれにくい個体がすでに決まっていて、年齢を重ねるごとに撃たれにくい個体が残っていく。つまり「遺伝」によって生まれつきの撃たれやすさが決まっている。
- 年齢を重ねるごとに、撃たれやすい場所を避けたり、ハンターに見つからないような行動を身につける。つまり「学習」によって身を守る。
- 「遺伝」と「学習」の両方が関与している。
メスのアカシカに注目したのは、群れを作って生活をしているためです。
仲間がハンターに撃たれて死ぬ所を目撃する可能性があり、そういう点でも「学習」する機会があると考えられます。
研究者たちがこの仮説を検証するために選んだフィールドは、カナダのアルバータ州からブリティッシュコロンビア州にかけての46,000km2という広大な土地です。西側には山森が多く、東側には農地や牧草地が広がる、多様な地形のフィールドを舞台にして研究が行われました。
とにかく研究者たちは、49頭もの鹿からデータを得ることに成功したんだ。
回収したGPS記録計には、鹿たちがハンターから逃れる術を「学習」していると推測されるデータが収められていました。
数理モデルに当てはめると、学習によって行動を変えていると考えた方が、より実際の鹿の行動を説明できることがわかったのです。
具体的には
・年齢を重ねるごとに、ゆっくりと移動するようになる。
ハンターに出会わないように慎重に動いているのかもしれない。
・年齢を重ねるごとに、道路の近くでは森の中を移動するようになる。
人に出くわす可能性の高い場所では、姿を隠しながら移動することを学ぶのだろう。
鹿は、人間の持っている武器の強さまで学んでいる可能性があるんだ。
カナダのこの地区では、ハンターに2種類の方法で狩猟をすることを認めています。
ライフルとボウガン(アーチェリーの弓のようなもの)です。
ライフルの射程距離は300 m程度までと長いのに比べ、ボウガンはせいぜい40 mしか届きません。
それぞれの道具を使って良い時期は決められていて、ボウガンは例年9月から、それが終わるとライフル狩猟のシーズンとなります。
GPSと地形データを合わせて解析すると、ボウガンのシーズンとライフルのシーズンで鹿たちの行動が変化することがわかりました。
鹿たちは、年齢を重ねるごとに起伏のある地形を好むようになりますが、この傾向は特にボウガンのシーズンで顕著だったのです。
この原因を研究者たちは、次のように推測しています。
射程距離の短いボウガンで鹿を仕留めようとすると、ハンターはどうしても鹿に近づかなければなりません。
そこで鹿はハンターとの距離を保つため、人間が移動しにくい起伏のある地形を利用しているのかもしれません。
逆に射程距離が長いライフル狩猟の時期は、起伏があり見通しの良い場所にハンターがいると鹿の居場所が丸見えになってしまいます。
そのため、鹿たちがそのような地形を避けている可能性があると考えられます。
鹿たちを見習いたまえ!
参考文献
Thurfjell et al. 2017 PLoS ONE 12(6): e0178082