海の中は雑音だらけ? 映画「Sonic Sea」

先日は、表参道の東京ウィメンズプラザで開催された「第13回 世界自然・野生生物映像祭」に行ってきました。

NPO法人地球映像ネットワークという団体が主催で、世界中から動物に関するドキュメンタリーや記録映像を集め、上映しています。特に素晴らしかったものには表彰を行うようです。

平日の昼間の開催とあってか、お客さんの入りはややまばらという印象でした。

今回は、上映されていたものの中から、特に素晴らしかった「Sonic Sea」という映画をご紹介したいと思います。

 

クジラやイルカが大量に浜辺に打ち上げられている光景を、ニュースなどで見たことはないでしょうか?

彼らの命を奪った原因は何でしょうか?

異常気象? 海洋汚染?

 

この映画は、海の中の「音」が彼らの死の原因であると主張しています。

 

クジラの仲間は、私たちと同じ哺乳類で、高度な知性を持っています。

彼らが音を発することでコミュニケーションをとっていることを、知っている人も多いでしょう。

それだけではなく、彼らは自分の周りの環境やエサの存在も、反響音によって「見て」います。

音を好むのは、彼らが水中の生活に適応して進化した証拠の1つです。

なぜなら、水中では光が伝わりにくく、視覚はあまりアテになりませんが、音は水中を非常に伝達しやすいという性質があるからです。

このため、水中に適応した彼らは、音によって自分の周りの情報を得る能力を手に入れたのです。

 

しかし、どうでしょう。

音を奪われたとしたら。

視覚に頼っている私たちの感覚からすると、暗闇に放り込まれるような恐怖があるのではないでしょうか。

 

近年の研究から、私たちの生産活動は、海の中にノイズを起こし、クジラやイルカの生活を妨害している可能性があることがわかってきました。

 

このノイズを立てている原因は3つ

https://www.sonicsea.org/learnより)。

 

・船の航行

世界の物流の98%は船に頼っており、また常時60000隻もの船が全世界の海を航行していると言われています。

 

・振動を利用した海底探査

海底の石油や天然ガスの探査のために、海中でエアガンのような装置を爆発させ、音波の反射によって海底の地形データを効率よく集める手法があります。

 

・海軍のソナー

海軍の軍艦は、潜水艦を発見するための音波を海中に発します。地上にいる人間も感じるほどの強力な音波であると言われています。

 

便利な生活や国家の安全保障のために、海の生物たちのすみかを犠牲にしても良いのでしょうか?

私たちの生活のある側面が、海で暮らす動物たちの平穏を壊していると知って、私たちは何ができるでしょうか?

ぜひ多くの人に知ってもらいたい作品でした。

 

 

映画祭ですが、この後は、2018年4月5~8日まで富山に場所を移して上映会が行われるようです。

「Sonic Sea」のようなジャーナリズム色の強い作品もありますが、人間と動物のふれあいを描くほんわかした作品もあります。

次の開催は、いつでしょうか。

楽しみです。

 

室長