ブックレビュー1 「動物翻訳家」

ぶた
アルパカさん、動物園というのは、どんなところなんでしょうね?
アルパカ
普段は会えないような動物がたくさんいて楽しいところだよ。
うし
人間たちは日頃の苦労を忘れて、動物園で非日常を味わいたいのですかね?
アルパカ
そんなに難しいことは考えていないさ。みんなただ動物を見るのが好きなんだよ
ぶた
生活を見られるのはなんだか恥ずかしいですね。動物園の動物は食べ物に困ることはないらしいですが、狭い個室しか与えられないという噂も聞いたことがあります。そんな生活をしてたら、フテ寝するしかないですね。
アルパカ
昔は確かにそうだったかもしれないね。人間もフテ寝している動物を見ても面白くないしね。でも最近は動物たちの暮らしが豊かになるように、人間も工夫をしているんだ。
うし
それは動物としては嬉しいですが、具体的にはどんな方法なのですか?
アルパカ
「環境エンリッチメント」という言葉を聞いたことがあるかい?

 

環境エンリッチメントとは、「動物福祉の観点から飼育動物の幸福な暮らしを実現するための具体的な方策」のことをいいます。(引用:市民ZOOネットワーク、zoo-net.org)

つまり、動物園にいる動物たちの暮らしが単調なものにならないように、飼育方法を工夫する取り組みのことです。

具体的には、エサの与え方を変えたり、社会を形成する動物はなるべく群れで飼育したりするなど、動物本来の行動を引き出すようなチャレンジが日々行われています。

市民ZOOネットワークという団体は、動物園のこのような取り組みを毎年表彰していて、動物園の飼育員さんたちが日々動物のことを思って積み重ねている努力が、だんだんと認知されるようになってきました。

 

アルパカ
環境エンリッチメントに取り組む飼育員たちの仕事を取材した本があるんだ。その名も「動物翻訳家」
うし
飼育員さんたちは、毎日動物と一緒にいるから、言葉もわかるようになるってことですか!?
アルパカ
いやいや、そうじゃない。言葉はもちろんわからない。わからないからこそ、長い長いプロセスを経て、動物たちにとって何が本当の幸せなのか理解していくんだ。
ぶた
言葉がわかるよりもすさまじい感じがします。
アルパカ
うむ。

この本では、4つの動物園で暮らす動物たちと彼らの幸せな生活を考え続けた飼育員たちのエピソードが紹介されています。

ペンギン(埼玉県こども自然公園)

チンパンジー(日立市かみね動物園)

アフリカハゲコウ(秋吉台サファリランド)

キリン(京都市動物園)

 

アルパカ
個人的に一番感動したのは、チンパンジーの章だね。
うし
他の動物と何が違ったんですか?
アルパカ
彼らの人生は、とっても山あり谷ありなんだよ。
うし
人間に飼育されながら暮らしていても、山や谷がありますか? 私の人生はこれまで、平坦でしたが。
アルパカ
そんなことないよ、君もそれなりに苦労しているじゃないか。

今動物園にいるチンパンジーは、もともと実験動物として研究所で生活していたり、タレント動物として飼育されていたりという過去をもっているそうだ。それが急に動物園で飼育されることになり、チンパンジー社会の中で集団生活を始めなければならないと考えると、どれほどの苦労だろうかと想像してしまうね。

うし
私も人見知りですので、びびってしまうでしょうね。
アルパカ
そんな苦労をさせてまでチンパンジーの社会で生きていくことが彼らにとって本当に幸せなのか。動物の命を預かった飼育員たちが、日々自問自答しながら仕事をしている様子が描かれているよ。
うし
そんな裏側のドラマがあるんですね。
アルパカ
この本を読むと動物園に行くときに、全く違う気持ちになると思うよ。
うし
楽しみですね、さっそく読んでみます。

動物たちはオリの中に閉じ込められて幸せなのか?

人間と一緒に生きていて幸せなのか?

動物たちの幸せを深く考え抜いた人たちを丹念に取材し、飼育現場での飼育員の葛藤や動物たちとの心のつながりを丁寧に描いたドキュメンタリー。

動物園には「かわいい」を超えた動物の魅力がつまっている。

ぜひみんなで読んでみようぜ!

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