そういえば先月、秘書さんの実家でワンちゃんが生まれたそうだよ。
今回は、イヌと生まれた月の関係を調べた最新の研究成果を教えるよ。
私たちがどんな病気にかかりやすいのか教えてくれる医療データ。
近年は人間だけでなく、犬たちの医療データも蓄積していて、これを解析することで犬たちの健康に役立てようという挑戦も海外では行われているようです。
アメリカのペンシルベニア大学を中心とした研究チームは、犬の「誕生月」に着目しました。
人間を対象にした研究でも、誕生月と病気へのかかりやすさが関連しているという報告があるからです。
地域によっても異なりますが、例えばニューヨーク市では、1月から4月に生まれた人が心臓の病気にかかりやすいという統計があります。
今回研究者たちは、「心臓の病気」に絞って、犬の誕生月と発生率に関連があるかどうかを調べました。
調査データは、動物整形外科財団(Orthopedic Foundation for Animals)が提供しているデータベースから集めました。
アメリカにあるこの財団は、犬や猫の遺伝病の研究に資金提供をしていて、たくさんの動物の病気のデータを集めています。
研究者たちは、誕生月がわかっている動物のデータを抽出し、聴診か心電図検査で異常ありと診断された犬の割合を計算しました。
最終的に、253の犬種、129,778頭のデータを集めることができ、このデータから心臓の病気との関連を探ったのです。
研究者たちは、解析する前に犬種ごとにデータを分けることにしました。
なぜなら、これまでの研究で、犬種ごとに病気へのかかりやすさが異なることが報告されているからです。
例えば、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルといった犬種は、心臓の病気にかかるリスクが高いことが知られていて、他の犬種と一緒にデータを解析すると、もともと知りたかった「誕生月」の情報が埋もれてしまうのです。
そこで、過去の研究報告を参考に、心臓病のリスクが「高い犬種」と「低い犬種」にわけて解析を行いました。
その結果、「リスクが高い犬種」では、誕生月によって心臓病の発生率に差は見られませんでした。
一方で、「リスクが低い犬種」では、6月から8月の間に生まれた仔犬は、将来心臓病になるリスクが他の月に生まれた仔犬よりも高かったのです。
このリスクは、7月がピークで、他の月に生まれた仔犬よりも心臓病のリスクが1.47倍になると計算されました。
このメカニズムはまだよくわかっていませんが、おそらく気候の変化が関連しているだろうと研究者たちは推測しています。
また、人間の研究と犬での研究を合わせて原因を探っていくことで、双方の医療にとって有益な情報を得られそうです。
今回は、心臓病だけに着目した研究でしたが、他の病気との関連も調べると、また違う傾向が見られるかもしれません。
参考文献
Boland et al. 2018 Scientific Reports 8: 7130